【解説】安倍元首相の銃撃現場、SAT元隊員が分析――「警備やりづらい場所」「非常に手薄」 規制なし、尾行なし…ナゼ?

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奈良市で参院選の演説中だった安倍元首相が銃撃され、死亡しました。多くの人が集まる場所で、殺人未遂容疑で現行犯逮捕された山上徹也容疑者の接近と2度目の発砲をなぜ許したのか。元警視庁特殊部隊の伊藤鋼一さんと、警備態勢や初動を考えます。

■規制ナシ…容疑者周辺の警備態勢

有働由美子キャスター
「元警視庁警備部特殊部隊(SAT)で、首相や訪日したアメリカ大統領らの警護にあたった経験がある伊藤鋼一さんにうかがいます。元首相が演説中に銃撃されたということで、さまざまな角度から現場を捉えた映像や写真が残されていました」

「奈良市の大和西大寺駅前の現場を確認します。(ロータリー前で交わる)道路で三角地帯となった部分に立って演説していました。山上容疑者は、そこから20メートルほど離れた歩道から、背後から近づき発砲したということです。演説場所としてはどうですか?」

伊藤さん
「おそらく、観衆の方に一番見える場所ということで選定されたのだと思いますが、非常に警備としてはやりづらい場所です。(複数の)道路があります。道路の規制さえすれば、その警備現場は掌握しやすくなりますが、道路も人通りも一切規制していません。山上容疑者のいた周辺などに、制服警察官を配置するのが通常の形です」

有働キャスター
「少なくとも(安倍元首相を四方から囲むような)4か所に、ということですね」

伊藤さん
「横断歩道(など)ですね。それがなかったということで、非常に手薄ではなかったのかなとは感じます」

■観衆とは違う行動…「逐次把握を」

有働キャスター
「実際の映像や写真を見ると、安倍元首相から約20メートルとみられる歩道で、山上容疑者らしき男が写っています。この写真から分かることは何でしょうか?」

伊藤さん
「警戒している警察官が見えません。極左や暴力集団、極右の者、右翼的な民族主義者などいろいろな人が来ますので、普通であれば、制服の警察官だけではありません。公安の刑事がところどころで警戒しています」

有働キャスター
「公安の刑事も基本的には警備するのですね」

伊藤さん
「もう1つは、山下容疑者とみられる男がバッグを持っています。観衆とは違う不自然な形で行動をしていますので、普通であれば刑事による尾行や職務質問、排除をやるべきでした」

有働キャスター
「普通のポロシャツとパンツを着て、肩掛けのかばんを持っている。これで怪しいと分かるものなのでしょうか?」

伊藤さん
「分かります。本来、そこに立っていたとしても、それまでに違う行動をしていると思います。襲撃場所を選んでいる可能性もありますので、その行動を逐次、把握していないといけません」

■テロの可能性も…「50人態勢で」

有働キャスター
「今回、この場所での警備はプロの目から見て、本来であれば何人ほどで警備すべきでしょうか?」

伊藤さん
「警視庁の場合であれば50人以上です。そこには機動隊も待機しています。今、問題になっている不特定多数に対するテロも起こり得る可能性もあります。(通常では)その他にさまざまな警官が配置されています」

有働キャスター
「手薄だった理由は何か考えられますか?」

伊藤さん
「分かりません。なぜ制服警察官を配備せず、私服の警護員だけで警備したのか、よく分かりません。選挙活動だからという、甘い見立てがあったのかもしれません」

■「発砲音」…その瞬間に取るべき行動

有働キャスター
「別の角度から捉えた写真では、最初に銃声が聞こえた瞬間ですが、安倍元首相の背後には白い煙が確認できます。最初に発砲音がした時点で、煙が見えた時点で、どのような行動を取りますか?」

伊藤さん
「本来であれば(要人警護が専門の)SPが背後に回って、次の第2の手段を講じられないように防ぐべきでした。もう1つは、犯人を確保すべきでした」

有働キャスター
「できるものなのでしょうか?」

伊藤さん
「できます。そのために警護員は訓練していますので。常に周辺に目を配りながら、動きを見ながら、そういう動きがあればすぐに反応するのが警護員の役割です。本来であれば、もっと素早い動きをすべきでしたね」

■犯行に使われた「手製の銃」とは?

有働キャスター
「確保間際の山上容疑者の写真もあります。犯行に使ったのは手製の銃ということですが、肩掛けかばんのような長いかばんを持っています。別の画像で筒のような物が落ちていますが、奈良県警の会見では長さが40センチということでした。これはどういう物でしょうか?」

伊藤さん
「おそらく、大砲のように鉄パイプで作って、直接、火薬を仕込んで、そこに金属製の弾を入れたのだと思います。電気式で発火させて飛ばしたのではないかと思います」

有働キャスター
「銃声のような音が2発ということですが、1発目が鳴った後、警備として、こうしたことを止められるものなのでしょうか?」

伊藤さん
「そのために訓練しているので、本来であれば素早い動きをしないといけません。そのために防弾のようなかばんを持っていますし、複数人を配置して、次の段階が来ないように動くようにする訓練をしています。本来であればやるべきことだったと思います」
(2022年7月8日放送「news zero」より)

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